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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2015/9 取材)

バブルではなく、二極化

長南 ファンドで集めた資金について、使い切るならばたぶん3年ぐらいで投資していかなくちゃいけないと思うんですけど、仮に良い投資先がなさそうと思ったら投資しないということはありますか。

今野 使いきらないことはあります。返金したケースはまだないですけど、選択肢にはいつも置いています。

長南 周囲のVCのバリエーションが一気に上がったからといってあまり追随しないスタンスなんですか。

今野 しない。僕らもやっぱり20年やってるといろんな失敗、成功があって、バブルになっている時にラッシュして良いことがなかった、というのもある。経済はサイクルで動いているので、実態以上のバリエーションがついてしまった時は必ずとは言わないけどほとんどのケースはいざEXITする時に相対的に景気が悪くなったりする。

長南 だいたい10年スパンで波ありますかね。だと、今は静観の時期だと。

今野 できるだけセーブしてます。去年と今年で投資ペースは全然違います。

長南 個人的にはIPOに関しては、昨年の5〜6月で具体的な潮目が変わったかな、という印象です。バリエーションが上がり続けたのがゴールデンウィーク明け、もしくはその前から上がってるんでしょうけど、一部でバリエーションが上がっている時期が年末くらいまで続いて。

今野 公募が引き上げられたのが一昨年の秋ぐらいからですよね。出口が大きくなったことで入り口も多少大きくなったというのと、よく今バブルとは言われるんだけど、僕らから見ると二極化してる感じがすごくある。良いところに多く資金は集まるけど、必ずしもそうでないところは大して変わっていなくて。良いところは常に膨らむと言う意味でいうと、平均値とすれば高い感じするけどバブルっていう感じはしないんですよね。

長南 LPからの「出資金は使いきろう」と言うプレッシャーがあると聞くんですけど、結果として使い切ってないファンドってあまり聞かないのですが、それはどうなんですか。

今野 うちは使い切ってないですよ、過去2回。使い切ってなくて、5年間の投資期間を6年に延長させてもらって、6年目以降は管理報酬は頂かないで、ただ新規投資はさせてくれ、っていうのは過去にもあります。ファンド終了期間変えずにですね。だから、本来は10年のファンドで5年の投資期間なんですけど、それを6年にして、お尻は10年+2年。

世界基準のゲートキーパー

長南 投資先は厳選されてきている印象ですか。

今野 元々起業するにはインフラ面でコストがかかっていたので昔は今よりも相対的にキャピタルインテンシブになりましたけど、今は資金使途が変わってきていて、海外に出るための資金をファイナンスするところがあるので、お金がかかるところが変わってきている。

長南 では、ドメスティックよりもグローバルな会社に投資したい、というのはありますか。

今野 僕らはITの中で大きく2つに領域を切っていて、1つはITによる市場創造で、インフォメーション・テクノロジー。グローバルにも出やすいし、コンシューマー・インターネットの新しい領域を作る、みたいな。もう1つはインダストリー・トランスフォーメーション、要は業態改革。それは基本国内ですね。日本だけおかしくなっているところ、業界に負があるところを変えるというもの。もしくは、日本で充分マーケットが広いところ。

長南 グローバルなイメージがあったんですけど、意外にドメスティックなところの社会問題解決にも注視していると。

今野 とにかく投資の原則は分散なんですよ。期間の分散、ステージの分散、領域の分散なんです。これはもうどこまで行ってもそうで。もちろん、追加投資に関しては、初期投資以降に進捗に合わせてメリハリは付けますけれども。アグレッシブにリスク取るなら取れば良いけど、それって下のリスクもあるから、基本的には分散で考える。だから、別にどっちが多いとか、どっちが少ないではないですね。

投資家インタビュー Vol.3 グロービス・キャピタル・パートナーズ今野穣氏 世界基準のゲートキーパー

長南 人のお金を預かる使命というものは強く感じているんですか。

今野 それはそうですね。日本のVCではまだ、典型的な機関投資家からお金を預かっているケースが独立系でも少ないじゃないですか。本当の運用のプロに投資されていると、とてもシビアになりますよね。事業会社が求めるような事業上のメリットよりも、「北米のVCや中国のVCと張るリターンを出そう」って話になりますから。それはもう世界のルール。

長南 VCにとってLPのお金の色っていうのはあると考えますか。例えば事業会社だったら事業シナジーを受けるとか、エンジェルだったら事業というより想いベースでやってくれるとか。やっぱり機関投資家っていうのはレベルが違うんでしょうね。

今野 全然違う。レベルと言語、見え方。もちろん機関投資家の方々も、熱意を持って新しい産業を作ってほしいとは思ってくれるけれども、結局どれぐらいリターンが出たのか、っていう話になるわけですよ。

長南 となると、機関投資家の方と起業家の方に対する二面性がないとやっていけないですね。

今野 そういう人達がいるから、僕らが中間にいれるんですよ。起業家と機関投資家の間にもう隔たりが大きいから、ゲートキープできる。 100億円を超えるファンドを組成するためにはまず機関投資家から集めないと難しい。アメリカの方が機関投資家が多い。あとは年金。だからアメリカって国民の生活がかかっているので、政治的にベンチャー、VCをサポートする。年金の資金が流れてるっていうのは、とてもシリアスっていうか。事業会社が損失を出すのとは影響の面で訳が違いますね。だから、アメリカにあって日本にないのは、大学と年金。日本だと基本的には誰もVCには出してくれない。まぁ、うちは一部いらっしゃるんですが。彼らからすると、上場株式、債券、ヘッジファンドやバイアウト、そしてVCがあって、一般論として、実はリスクが高い割に、ファンド規模も決して大きくなく、リターンが出ないっていう商品なんですよ。

投資家インタビュー Vol.3 グロービス・キャピタル・パートナーズ今野穣氏

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