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INTERVIEWS WITH INVESTORS

(2015/10 取材)

投資したお金を価値に変えて成功して欲しい

長南 最近のベンチャー企業を取り巻くファイナンス環境、今と今後って、この2〜3年はどのように変化していくと見ていますか。よく炎上記事でベンチャーバブルじゃないかっていう記事があると思うのですが。あと2〜3年で落ちるのか、それとも続くのか。人によって結構見解が分かれるとろこですよね。

河野 そうですね。まぁ、バブルっちゃバブルだな、とは思います。起業家側に提示されるバリエーションが著しく高いと思うことが多くなっていますね。ただ一方で、充分なリスクマネーが今まで供給されていたかと考えると、より多くのお金がこちらに振り向いてきたという意味においては、良い流れだとは思います。

長南 やっぱり国のお金の流れも大きいんですか。

河野 それもそうだし、オープンイノベーションとか、ITの進化の速度の早さとか、やっぱり日本の大企業が内製でやっていくには難しいよね、っていうことが徐々に分かってくる中において、皆がベンチャーに目を向け始めたっていうのもあると思いますね。

長南 昔のVCだと工場とか設備投資型が多くそれに対してお金がかかっていたイメージで、最近はまたちょっと違う多額なインフラ投資でないような在り方だから、件数も増えているようなイメージはあります。統計データだとベンチャー投資額って減っているじゃないですか。ジャフコさんは入っていないですが。それでも件数や与えるインパクト、その絶対値は減っているけれども、仰ったように活性化というか、リスクマネーが供給され始めているような印象は受けます。

河野 そもそも、まだ1,000億円程度の規模の産業なんで、産業ってそもそも言えるのかっていう状態です。アメリカだと今4兆円とか5兆円とかじゃないですか。そういう意味で見比べると、全然足らないんで。

投資家インタビュー Vol.5 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ河野純一郎氏 投資したお金を価値に変えて成功して欲しい

長南 アメリカは、常に新しいベンチャーとか産業ができていて、国自体の成長の源泉ですからね。

河野 そうですね。だからそういう意味では国もそうだし、大企業もそうだし、スタートアップっていうものが彼らの視界に入るようになったっていうのは意味のあることだなぁ、と思っています。ただ、やっぱりそれをブームで終わらせちゃいけないと思っています。1年前、2年前に非常に大きい資金調達をしたスタートアップが、調達したお金を価値に換えて、やっぱり成功しないとだめですよね。結局バブルかどうかっていうのは、渦中にいる時には判定が難しいわけじゃないですか。後に振り返った時に「あれはバブルじゃなくてやっぱり潮目の変化だったよね」って言われる状態を作らないといけないなって思います。だから、あんまり外に立って「バブルだ」「バブルじゃない」と言っていても仕方がないって思うんですね。

長南 一瞬のひずみは出る可能性はありますから、価値が結果として上がればいいだけですね。

河野 はい。でもしっかりとした起業家は、バブルだからどうとかではなく、価値という基準でしっかりと事業を見ているし、入ってもらうべき投資家に入ってもらうっていうことを重視して、シェアとか近視眼的なものに囚われずに判断しています。だから、「バブル」っていう言葉で思考停止になっちゃいかんなぁ、と思っていて。このブームに乗ってやれ、みたいな人も中にはいるでしょうけどね。あと、それを助長する投資家とかも。そういう意味では、カオスな状態に一度なるんじゃないですか。 後に振り返って、「正解だった」という状態を作っていくことが、重要だと思いますね。バブルって言ったって投資しない選択肢だって残されているわけだから、あとは逆にしっかり地に足のついた議論のできる、浮かれていない起業家としっかり事業をやるとかっていう。やり方はいくらでもあると思うので。だから、確かに高いなって思う時もありますけど、それだったらやらなきゃ良いだけの話で。

長南 高いバリエーションで投資をしたとしても、バブルと捉えられてしまうとちょっとな、っていう感じですね。

河野 そうですね。だから恐いのは、今ってスタートアップが注目されているからこそ、CVCだったり色々なファンドができて投資がそちらに向いてるっていうのは良いんですけど、上手くいかなかった時ですよね。高値掴みして結果的にパフォーマンス上がりませんでした、ってなった時に、「やっぱり自分達の選球眼が悪かったよね」とか「自分達がよく分かっていないのにやってしまったのが良くなかったよね」っていう風になればまだ良いんですけど、こういう時って「やっぱり日本のベンチャーはクオリティーが低い」とか、一重にベンチャー業界はだめだ、みたいな論調にもなりがちなので、それが恐い。そうすると、結局源流のお金の出元が閉まってしまうので、そこは本当に難しいですよね。

最適な座組みを考えて、その会社の企業価値を最大化する

長南 投資をする時に、どのくらいのバリエーションの企業で、何%くらいを投資するか、みたいな目安はありますか。

河野 あってないようなものなんですけど、過去の僕の自分の投資を19件見ていると、シリーズAで投資しているのが78.9%。8割、だから、ほぼシリーズAですね。で、平均投資額が1億7,400万円で、シェアで言うと平均で10.4%なんですね、そういう意味では。

長南 バリエーションで言うと、20億円弱。

河野 うん、まぁ、平均で言うとそうなっちゃいますよね。1個大きいやつがあるんですけど。

長南 今後はどのくらいを目安に考えているかっていうのはありますか。

河野 いや、何も考えていないんですよね。だって、それが基準になったらさっきの振る舞いって出来ないわけですよ。投資家の「いや、俺は1本何%くらいくれないとやらない」みたいな、そういう確かにポリシーを持ってやることとやらないことを決めるっていうのは大事だと思うんですけど、僕はそこにこだわるよりは、その会社においての最適な座組みを考えて、その会社の企業価値を最大化するためにどうするかっていうことを考えた方が良いなぁ、と思っていて。

長南 全体のバランスを見ているということですね。

河野 そうです。だから、シェアを取りにいく時は取りにいきますよ。ただ、取りにいき過ぎて次のファイナンスの選択肢が狭まる、みたいなことはやりたくないので、その事業領域においてIPOまでに必要な資金量っていうのはどれくらいで、初期にこれくらい取って、ダイリューションしていくのか、追加し続けることによって維持していくのか、デットとエクイティを組み合わせた方が良いのか、みたいなのは資本政策のグランドデザインをちゃんと考えた上でやっていきますけどね。

長南 投資の段階でEXITはIPOとM&Aのどちらを考えていますか。

河野 投資の段階ではそりゃあもうIPOですよ。ただ、別にIPOを単独で目指せるくらいのポテンシャルのある会社じゃないと、ポジティブなM&Aも難しいんじゃないかっていうことと、安直なM&A思想で事業をやって欲しくないなって気もするんですよ。これは別に賛否両論あると思います。逆に、M&Aっていうのも、オーナーシップを取るとか取らないとか関係なく、最適なパーソナルでやった方が良いって選択も当然ありますから。ただ、やっぱり個人としては、世の中にとって必要不可欠な企業になっていただいて、より多くの人の笑顔とか、まぁ恥ずかしいですけど、そういうものを作る会社になって欲しいなって思えば、やっぱりIPOをちゃんとして世界に羽ばたいていって欲しいなって思いますよね。ただ一方で、さっきのポリシーの話ではないけど、大事なのは自分自身の我を通すこと、それも大事なんだけれども、場合によってはM&Aしてどこかと一緒にやった方がこの事業をよりスケールさせるってことが実現できるのであれば、そういうのをニュートラルに考えなきゃだめだよって。

投資家インタビュー Vol.5 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ河野純一郎氏

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