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2015/10/01

IPOトレンド

2014年、2015年はIPOバブルなのか?

ここ数年、設立間もないベンチャー企業が高いバリエーションで多額の資金調達を行い、短期間の上場準備期間でIPOを果たすケースも見られます。2000年頃の設立間もなく、売上高もほとんどなく、一見革新的ともいえるビジネスモデルを謳う新興企業が続出したITバブルと比較して、またあのIPOバブルの再来かとの見方もあります。

▼実際のIPO件数の推移
実際のIPO件数の推移
(※)東京証券取引所 新規上場基本情報にて公表しているIPO件数を参照の上作成
http://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/new/basic/04.html
(※)2015年件数は上半期内でのIPO件数
実際のIPO件数の推移グラフ

2008年のリーマンショックを受けて、翌年の2009年以降は上場企業の株価低迷と合わせ、IPOも激減していました。しかし、アベノミクス「三本の矢」の効果もあってか、東京証券取引所などの積極的なIPOのPR活動、各証券会社の審査の柔軟化なども重なり、年間100社にも届こうかとの勢いになってきました。ベンチャー企業のしっかりとした業績が最大の要因と考えられますが、様々な経済環境や日経平均株価の上昇などにより、数年前と比較して高いバリエーションでの資金調達やIPOが可能となったことが、関係する当事者の利害が合致したことも1つの要因と考えられます。

安倍政権が「デフレからの脱却」「富の拡大」を目指し、アベノミクス「三本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)」を掲げており、 証券市場への期待が高まったこと、長期にわたる円高が是正されたというのも大きな要因と考えられます。

起業に取り組みやすい環境整備も進んでおり、「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、 資金調達時に一定の条件を満たす場合、経営者は個人保証を求められず保証債務の整理を行った際でも 一定の資産を手元に残すことが可能となりました。また、「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」の改正が行われ、設立間もないベンチャー企業にも公共事業への道が広がりました。

日本経済は世界経済の影響を良くも悪くも受けるものの、国内における状況からは短期的には少なくとも追い風が吹いていると言っても良い状況にあると考えます。

目安は週2社ペース、年間100社

起業やIPOによるExitへの敷居が下がり、大企業によるベンチャー企業のM&A活性化の動きはヒト・モノ・カネのエコシステムが回ることを意味し、歓迎すべき状況ではあります。しかしながら、特にIPOに関しては適正な目利きとガバナンスが働くことが前提となるため、単純に件数が増えることが望ましいと言うわけではありません。
ITバブル期は毎日1社IPOを果たす状況であり、東京証券取引所や証券会社の上場審査のキャパシティを考えると、 少し過剰であったのではとの声も聞かれています。

あくまでイメージに基づくペースではありますが、週2社、年間100社が心地よい規模だと考えます。世界的に見てもIPOの件数が1つの景気動向を探るメルクマークとなり、また、受け皿となる現在の国内の監査法人、証券会社、証券取引所等の人員体制を鑑みるに、100社を超えてくるとTooMuchとなってしまうでしょう。

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